Illustratrice japonaise basée à Paris.

カモメ

2017年06月30日

自宅から歩いて15分程の所に、森が広がっている。入り口の近くには湖があり、その中には人工的に造られた島が二つ繋がっていて、夜間以外は行き来できるようになっている。孔雀、白鳥、雁、鴨、ガチョウ、などなど様々な鳥達が住んでおり、全て放し飼い。人を恐れない彼らは、触れられる程近くに来ることもあるが、触ろうとするとスルッと避け、上手な距離の取り方をする。
 
そこにいるカモメの子供(まだ身体が白くなく、薄い茶色や灰色の毛が混じっている)が気になって、一週間に一度は見に行くようになった。
 
初めて見た時、白鳥に餌をやるおじさんの周りで必死に、自分にもくれ、とアピールしていた。鳴きながらぐるぐるとおじさんの周りを回るが全くもらえず、しばらくするとその場を離れて水辺に歩いて行った。
諦めたのかと思っていたら、水を飲んだ後に戻ってきて、一層声を張り上げて存在を主張するその逞しさに笑ってしまった。君、ガッツがあるねえ。最後にはおじさんに気づいてもらい、餌にありついていた。
 
しかし、他の鳥は大抵同じ種類の鳥と一緒なのに、このカモメだけはいつも一羽なのだ。親鳥も見当たらないし、そもそもこの辺りでカモメをあまり見かけない。どこから来たのだろう?雁の群れの近くにいることが多いけれど、一緒に行動する程の親しさは伺えない。勝手な人間の想像ではあるが、その姿にどこか哀愁を覚えてしまうのである。
 
去年見かけた孔雀の雛が、一年で随分立派に成長して、数羽揃って求愛行動の練習をしているのを見かけた時、こんな風に時間をかけて成長を追えるって幸せだな、と思った。このカモメもいつかそう遠くないうちに、真っ白な大人になる時が来るんだろう。近所の子供を見守るおばあちゃんみたいな心境になりつつある。さて、そろそろあの子に会いに行こうかな。