Illustrator & Graphic designer based in Paris.

ベランダの攻防

2016年06月7日

ベランダに鳩が来て困っている。鳩そのものには何の恨みもないのだが、彼らの落とす糞や羽でベランダが汚れるのは嫌なのだ。しかし実のところ新参者は私の方で、彼らはここで生まれ育っているらしい。鳩が生まれ育つって、結構な環境だと思うのだが、元々の住人である旦那さんは多分、色々とあまり気にならない人なのだろう。加えて小さい動物が好きなので、鳩に対しても見かけると声をかけたりして楽しそうにしている。外で野良猫に出会った時と同じように愛でている。
先月、結婚式の準備で本格的にベランダを掃除しなければならなかった時は、さすがに彼も鳩に対して不満を述べていたが、その後買うことにしたと言っていた、音で鳩を追いやる為の装置は一向に買う気配がない。一度、私がカラスのダミーを段ボールで作ったことがあったのだが、笑えるくらい全く何の反応も示されなかった。勇ましく羽を広げて飛んでいる格好にしたのに。数回場所を変えて吊り下げて見たが、ほぼ無視。悔しい。

鳩は巣を作ろうと、家の周りの木や草をせっせと運んで来る。一本ずつ口に加えてトコトコと歩く様子は、見るとほのぼのするが、私たちはその度に心を鬼にして妨害して来た。物の陰に作ろうとするので、出来るだけそういう空間を作らないように工夫もした。しかし本当にいつまで経っても諦めない。ある時は壁と物の間の細い隙間、またある時は観葉植物の根元。そのNEVER GIVE UPさは、文字通りなのだ、感心してしまうほどに。いや、実は何も考えていないだけなのかもしれないが。

手すりの上を小走りに走る鳩が滑った所などを目にすると、ちょっと得した気分にもなるが、やっぱり来ない方がいい。これからもっと暖かくなれば、ベランダで過ごすことも増えるだろう。こちらの夕暮れは既に10時近くと遅いので、夕食をベランダのテーブルでとる時もある。ちょっと外に出るだけで、普段の食事が一層美味しく感じられるから、私は好きだ。

と、ここまで書いた所で状況に変化が見られた。二日程前から鳩がぱったり来なくなった。原因はというと、数日前、ついに完成した巣の上に、太めの鳩がどっしりと腰を下ろしていた所を彼が急襲し、産んだ卵ごと巣を処分したのだった。母鳩は相当恐ろしい思いをしたと見えて、二三度戻ってきたものの、巣を作ろうとはせずにいなくなった。おそらく別の場所に作ることにしたのだろう。巣を作ることが防げないと、産んだ卵を奪うという、更に鬼のような所業をしなければならないのだ。鶏のことを考えれば、何を今更センチメンタルな、という気もしなくもないが、直面するとやはり気分は複雑である。彼もしばらくは罪悪感に苛まれるのか、シュンとしていた。そして不思議なのは、毎日3〜4羽が仲良く手すりの上を歩いたりしていたのに、1羽も来なくなったことである。母鳩が他の鳩にも知らせたのだろうか、あの家には鬼が住んでいるから近づくなと。