Illustrator & Graphic designer based in Paris.

仏式結婚狂想曲

2016年05月12日

先週の金曜日に、今住んでいる街の市役所で、結婚式をした。式は16時から、その後自宅に移動して、17時からパーティ。新郎新婦自ら手料理でおもてなし、といえば聞こえは良いが、私は全く料理に自信がなく、大人数なんて以ての外。当日は自分たちの用意もあるし、絶対時間が足りなくなるはず、よってケータリングを頼みたい、とかなり主張したのだが、40人招いてパーティしたことあるから大丈夫、何とかなる、という節約派(?)の彼に押し切られた。日本から家族も友人も呼ばず、完全にアウェーの状況であるし、それなら逆に彼の好きにさせればいいか、と最終的には腹を括った。
 
買い物を数回に分けて済ませ、前日には私がキッチンで下準備に数時間、その間彼は家の窓やベランダなどの大掃除。飾り付けは私が前もって少しずつ済ませていたから問題なかった。そう、私は元々小心者で、いつでも無理したくないタイプなのだ。期限間近に爆発的にパワーを発揮するタイプとは違い、期限が近づけば近づくほど落ち着かなくなり、本来の力が発揮できなくなる(と思う)。多分この辺の感覚は、同じ部類の者同士にしか分かり合えないものなのだろう。
 
当日はやはり午前中からバタバタで、というのも彼はこんな時にネクタイを買いに行き、開店時間を間違えて足止め(後から聞いたらその時カフェでコーヒー飲んでたって、そりゃ待つしかないんだけど、私は一人キッチンで格闘中でしたよ)、もう何処からツッコめば良いのか分からない。これが日仏の違いなのか。
お昼過ぎに戻ってきた彼、焦り過ぎて笑顔もなく黙々と作業する私を和ませようと思ってか、やけにテンション高く、褒めまくりながら全ての料理の仕上げをしてくれた。ドレッシングとかソースを作るのが上手いのだ。
そんなこんなで、15時半に結婚式の保証人(男女一人ずつ必要)を引き受けてくれた友人が来た時には、既に服も着替えてメイクもし、彼が室内の飾り付けにプラスしたいという、風船を膨らましていた自分を褒めてやりたい。
 
結婚式は物珍しく面白かった。豪華だけれど華美ではない、落ち着いた広間で行われ、市役所の人達と、私一人の為に雇った通訳の人、計三人の女性が部屋の正面に立ち、次に新郎新婦の私達が居て、その後ろに彼の親戚や友人が並んでいた。
二人に結婚の意思があるかを確認されるのは、よくある教会の結婚式のイメージと同じだけれど、その時に夫婦の権利や義務だけでなく、子供を持った場合の、子供に対する親の権利や義務についても、法律の条文に触れつつ説明された。
一通り説明を聞き、宣誓し、書類にサインすると、式は終わり。皆が笑顔と拍手で祝福してくれた。広間を出て、一人一人からお祝いの言葉をもらううちに、何故かホロリと泣けて来てしまって、私にとっては初対面の人がほとんどだけど、そんなことは関係なく、人は温かい気持ちに触れるだけで、自然と涙腺が緩むのだなあ、などと頭の片隅で思っていた。
 
サマータイムと緯度の影響で、パリは17時と言えどまだ日は高く、雲ひとつないような真っ青な空、街は初夏の陽気だった。数日前まで、パリはまだ朝晩10度を切る寒さだとぼやいていたのに。
パーティはシャンパンを待ちきれない人々の、そわそわした空気の中なしくずし的に始まり、飲み始めてしまえば後はもうご自由にどうぞと、私も彼も来てくれた人と笑顔で話し続けているうちに、いつの間にか日付が変わっていたのだった。