Illustratrice japonaise basée à Paris.

旅遍歴

2020年05月3日

以前旅先で知り合った韓国人の女性から、10年ぶりにメールが届いた。
知り合ったのは更にその6年前、イタリアでのことだ。それでもメールの差出人を見た瞬間に、当時の彼女の顔(というか全体的な雰囲気)がパッと蘇り、次いで、旅の記憶の断片がパラパラと、脈絡なく頭の中に降って来た。しばし時間を忘れて思い出に浸る。
 
それは私にとって記念すべき、初めての海外一人旅で、憧れの地であったイタリアを、バスや電車を使って5週間かけて回った。泊まるのはもっぱらユースホステル。行く先々で人との出会いと別れがあり、互いに情報交換しつつ、自由に次の行き先を決める、行き当たりばったりの旅の面白さに心を奪われた。
 
それからほぼ10年の間、お金を貯めては旅をするということを繰り返した。イタリアの翌年は、その旅(イタリア旅行)で知り合った人を訪ねて香港へ行き、ついでにマカオ。また次の年にはドイツとイギリス。台湾にも知り合いを訪ねて行ったはずだが、あれはいつのことだったか、もう定かでない。筆不精のせいで、今となってはその誰とも繋がっていないけれど、皆元気にしていることを願う。
 
その後は自分の興味の赴くまま、東南アジアへも行ってみようと思い立ち、ベトナムをひと月かけて北上し、マレーシア、バリ島、ロンボク島へ計3ヶ月の旅。これが2012年のこと。
一旦日本に戻った後、2013年の春には北欧を目指し陸路でパリからベルギー、オランダを通りデンマーク。バスでスウェーデンへ行き、フェリーでフィンランドへ。そこから飛行機でアイルランドへ寄り、スコットランドへも足を伸ばした。個人的に北欧はデザインからして好みのど真ん中で、アイルランドやスコットランドは自然の風景が不思議と懐かしさを感じさせ、心踊る場所だった。遥か昔、住んだことがあったのかもしれない。前世というものがあるならば。
 
韓国にも一度は行ってみたいと思いながら、結局一度も行かないまま、欧州へ来てしまった。九州に住み始めた時、釜山へフェリーで行けると聞いてワクワクしたのに。いつか行く機会があるだろうか。
 
ともあれ、10年ぶりでも何も変わらない、朗らかに語りかけてくる彼女のメールが、一日を明るくしてくれた。