Illustratrice japonaise basée à Paris.

自転車でロワール古城めぐり

2019年09月7日

7月に10日間程、古城で有名なロワール地方へ行って来た。フランスの北部に位置するパリからは、南西へ電車で2時間くらいの所だ。ロワール川流域には数百もの古城が点在しており、世界遺産にも登録されている。以前からその景観の素晴らしさについては聞いていたし、平地なので自転車で走るのにも向いているから今度行こうと、自転車好きの夫からも度々話が出ていた。
 
一昨年からの四十肩もほぼ治ったので、2年ぶりの自転車旅行である。フランスに来てから通算3度目となるこの旅行(自転車+キャンプ)、1度目も2度目も私にとっては中々に過酷な要素を含んでいた(体力的・精神的共に)。だから純粋に久しぶりで楽しみな気持ちと、次は何が来るかと若干身構える気持ちとが同居していたのだが、そこは自転車乗りが多く集まるロワール地方のこと、自転車専用道も整備されており、そうでなくても車も自転車に慣れている様子で、旅の最初から最後まで、楽しみながら走り通すことが出来た。この地方特有の、青みがかった濃い灰色の屋根が続く街並みや、深く澄んだロワール川を横目に見ながら自転車を漕いだ。
 
私達のように自転車で旅行している人もよく見かけた。60代くらいのカップルも少なくなく、皆溌剌としており、大きなバッグを前に後ろに括り付けて走っているのを見ると、荷物は夫に全部お任せの自分が少々恥ずかしかった(しかし、夫との体力差を考えると、うちはこれが妥当なのだ)。
 
さて、どのようなルートで回ったのかというと、まずパリからブロワという街まで電車で行き、そこから自転車で1.ブロワ[Blois]城、2.シャンボール[Chambord]城、3.シュヴェルニー[Cheverny]城、4.ショーモン[Chaumont]城、5.シュノンソー[Chenonceau]城、6.アンボワーズ[Amboise]城、7.クロ・リュセ[Clos Lusé]城、8.ヴィランドリー[Villandry]城、9.ランジェ[Langeai]城、10.アゼ=ル=リドー[Azay-le-Rideau]城、11.ユッセ[Ussé]城、12.シノン[Chinon]城、13.モンソロー[Montsoreau]城、14.フォントヴロー[Fontevraud]修道院、15.ソミュール[Saumur]城まで、キャンプ場でテントに寝泊まりしつつ、1日当たりの走行距離は大体25~45kmくらいで走っていた。
 
以上の経験に照らして言うと、外観と内装、そして歴史的背景の面白さ(見せ方とも言える)、この三つが三拍子揃う城は、そうそうない。そして城と言ってもこれだけあれば似通いそうだが、これが皆結構バラバラで個性的なのだ。良くも悪くも。
ということで、あくまでも個人的な感想であるが、オススメするならここ、というのを書いてみたい。
 
【総合一位:シュノンソー城】
→外観・内装・歴史と三拍子揃った城は何処なのかというと、それはシュノンソー城である。ちなみにこれは夫とも意見が一致した(日仏合意、笑)。川の上に張り出した回廊が特徴的な外観、内装は特に壁紙の配色や柄等のセンスの良い部屋が幾つかあり、それぞれの部屋に物語があるというか、そこに住んでいた人を感じさせるのだ。特に気に入ったのは、繊細な細工の施された木の天井と、濃い緑の壁で囲まれた小さな図書室で、16世紀の城主カトリーヌ・ド・メディシスが使用していたという。心地よい風の入る窓からは、川と緑が目に入る。こんな所で私も読書に耽りたい。カトリーヌは歴史的背景においても中心人物で、その夫であった国王アンリ2世と、王の愛妾ディアーヌ・ド・ポワティエとの関係が、とにかく色々と濃いのである。ディアーヌは王より20歳近く年上で、彼の教育係でもあった。と、ここまででも十分インパクトがあるが、各人物像にも諸説あるようで、数百年経った今でも人の興味を惹きつける、存在感抜群の城である。
 
【外観編】
→シャンボール城:森の中を通り抜けて、パッと開けた視界に飛び込んで来たその姿を見た時に、思わず「おお」と声が漏れた。よく見ると色々な幾何学模様が混じった細工がされていて、小さな煙突(?)のような塔がいくつも立っている、独特な形状をした城である。
→ショーモン城:重厚感のある城の外観はもちろんのこと、周りの庭に咲く花の配色に唸らされた。青、水色、薄紫、紫、白で統一された花々がとても品良くまとまっていた。
→アンボワーズ城:日本の城下町のように、城が街を見下ろす形で配置され、こじんまりした街の雰囲気も含めて気に入った。
 
【特別編】
→アゼ=ル=リドー城:小さく可愛らしい外観が印象的な、白い壁の瀟洒な城。幾つかの城で現代美術の展示があったが、ここが一番、城の雰囲気を壊さず上手く溶け込んでいた。
→クロ・リュセ城:レオナルド・ダ・ヴィンチが晩年を過ごした城。彼の発明品の模型がたくさん展示されていて興味深い。広々とした庭にも、発明品の模型(大)が幾つもある。ビシッと整えられたフランス式庭園とは違う、植物園のような庭は歩いても楽しい。
 
こんな所だろうか。ロワール地方は今回が初めてだったけれど、川の近くに住むのもいいな、と思うくらいに好感触で、また是非行きたい場所の一つとなった。大きな森もあり、野生のイノシシの親子や、野ウサギ、キツネを見られたことも大きいかもしれない。パリとはまた全く違う魅力を持つロワール、美味しいワインの産地でもあるし、フランス好きな方には是非一度訪れてみて欲しい場所である。