Illustratrice japonaise basée à Paris.

初夏の出来事

2017年05月29日

このところ晴天が続き、日中は30度を超える日も出て来た。暖かくなって喜んでいたと思ったら、汗だくで暑さに辟易するのももうすぐ。季節が変わるのは早いと、毎年同じことを思っている。
 
今月の初め、久々にフランスの洗礼を受けた、と感じる出来事があった。滞在許可証関連で、フランスの行政に対しては少しずつ経験値が溜まっていたが、日本にも販売店がある有名な店(本社は北欧)ですら、フランスにあればフランス流なのだという当たり前のことに、私は気づいていなかった。
 
私たちはここ数ヶ月、ソファを探し続けていた。ピンからキリまでというけれど、ピンとキリしかないような印象で、すごく安くてデザインも質もイマイチか、気に入ってもソファにこんな額は払えない、と躊躇するかのどちらかだった。しかしある日ふと、以前ネットで一度見かけて、二人ともまあまあいいね、と言っていたソファを思い出し、改めて見た所、もうこれで決めよう、という気分になった。
ネットで注文、結婚記念日に届くように手配し、うきうきと「もうすぐソファが来るね」と待っていたが、前日になっても配達に関するメールが来ない。
当日の朝、土曜日だというのに7時から起きて、8時以降の配達時間に備えていたが、やはり気になるので夫が店に電話で問い合わせてみた。
 
最初に出たのは女性。調べる旨を告げられ、やけにテンションの高い保留音が流れる中じっと待っていると、突然曲が止まった。静かである。切れた後の音もしないので、繋がっているのか切れたのかわからないまま、スピーカーの状態で15分程経ち、結局掛け直した。
次に出たのは男性。同じことを説明する。保留音が流れる。そしてまたスピーカーに切り替え。今度は、ずっとこの陽気な曲と共に放置された。頭の中に単純な疑問が浮かぶ。
 
– 何で電話口に戻って来ないのだ?
 
そして三人目。一人目とはおそらく別の女性。三度目の説明をする夫。今回は放置されなかったが、調べた結果、配達の手配がされていないと。届くのは2週間後になるとのこと。頭の中はまた疑問符でいっぱい。
 
– 配達の手配がされていないって、どういうこと?しかも2週間後って遅くない?
 
さすがにこの信じがたい事態に夫が説明を求めたようだったけれど、女性の口調は明らかに「自分に言われても困る」と、全く謝る気配はなかった。完全に店側のミスなのに。
私たち(主に私)の、このやり場の無い怒りは一体どうしたらいいのだろう。
電話を切った後、私はつい「こんなの日本じゃありえないよ!」と言ってしまった。言っても仕方ないと分かっていながら。
「これがフランスなんだよ」と、夫はガッカリしつつも始終冷静だったが、私がその境地に至るには、あとどのくらいの年月が必要なのだろう。
 
ちなみに2週間後の配達は、問題なく遂行された。真新しいソファは、以前より一回り小さいけれど、快適である。